玄米の知恵袋

玄米の正しい食べ方と、効果について

炊きたてのご飯「かきまぜる派VSまぜない派」

ごはんが炊けたらかき混ぜる人と、かき混ぜない人がいる。混ぜる派と混ぜない派それぞれに理由があるが、違いはあるのか、おいしいのはどちらのごはんなのか。 

ごはんを混ぜる理由

 

「王道のまぜる派」がかき混ぜる理由

まぜる派の人がかき混ぜる理由

混ぜる派の人がかき混ぜる理由は「ごはんの硬さにバラつきがあるため、かき混ぜることで均一になる」、あるいは「余分な水分や水蒸気がとぶ(減る)のでベチャベチャにならない」、または「混ぜないとごはんが硬くなる(かたまりになる)」といった味と食感に関するものが最も多い。


また、「うちではお母さん、おばあさんがかき混ぜていた」、もしくは「料理教室や小学校でかき混ぜるように習った」といった理由で混ぜているが、混ぜる意味は理解していないといった意見も少なくない。


まぜる理由は感覚的な説明が多い中で、専門店の説明は分析的でとてもわかりやすい。

 〝ほぐし〟とは、ご飯粒に冷気を当てて、表面を老化させて歯ごたえを作ることにあります。ほぐしのタイミングは、95℃~90℃です。ご飯が熱いうちにほぐしてあげてください。蒸らし時間が長くなり90℃以下になると、〝生戻り〟や、〝釜帰り〟といって、ご飯粒の周りにある遊離水が結露して表面澱粉が糊になり、密着してしまい触感の無い、ベチャっとしたご飯になってしまいます。ご飯は悪戯にこね回すのではなく、軽く、やさしく、素早くほぐしてください。
http://ootaya.life.coocan.jp/suihanwokagakusuru.htm

かき混ぜる派の混ぜる理由が詳しく書かれている。これによると「余分な水分をとばす」または「水蒸気を逃がす」といった説明は、ご飯粒の表面の水分を飛ばすことを指すのだ。熱いうちに混ぜることで水分を飛ばしやすい。


伊勢丹新宿店にあるおにぎり専門店「穂の香」でも、同じ理由で全体をしっかり返すとしている。また、こちらのお店では握った時に米がつぶれないように、炊く時の水加減を5%減らしているそうだ。

〈炊き方のコツその④〉炊き上がりのご飯は全体をしっかり返す
「米の粒をコーティングするでんぷん質は空気があたることで固くなり、一粒一粒がしっかり立ちます。すると握った際につぶれず、ふっくら仕上がります」
炊飯器の底から全体をまんべんなく返しましょう。

参照:https://mi-journey.jp/foodie/21342/
ふっくら美味しいおにぎりの作り方。コツは「握り方」じゃなかった! | 三越伊勢丹の食メディア | FOODIE(フーディー)

空気があたることで固くなるというのは、水分を飛ばして表面のでんぷんが糊状になるのを防ぎ、歯ごたえが生まれたものだ。


かき混ぜ方

かき混ぜ方には大きな違いはない。上下をひっくり返すようにまぜる、また、つぶさないようにしゃもじを縦にして、切るようにしてまぜるなどである。米粒をつぶさないことと、上の方と下の方を入れ替えるようにして混ぜることがコツのようだ。


かき混ぜるタイミングは炊飯器に蒸らし機能が有るか無いかで違う。家電量販店に並んでいるよくあるタイプの炊飯器は、蒸らし機能の説明が無いものでも機能は付いているので、炊き上がってすぐにまぜても大丈夫。蒸らし機能が無い炊飯器は10分~20分ほどおいてからまぜる。

genmaisan.hatenablog.com

「革新のまぜない派」がかき混ぜない理由

まぜない派の人がかき混ぜない理由

混ぜることが下品だと感じる」などの理由で、混ぜたごはんが不味いと感じる。これは「人がにぎったおにぎりは、なんとなく汚い気がするので不味く感じてしまう」という感覚に近いのではないか。

他人がにぎったおにぎり

新しい炊飯器はかき混ぜなくてもいいようにできている」という理由があったが確証が得られない。炊飯器の機能の説明を見ても、混ぜなくてもいい旨の事はどこにも書かれていない。これは当人がそう思っているだけではないか。


有名和食店ではかき混ぜないらしい」 という胡散臭い話も耳にしたが根拠がない。なにより前述のおにぎり専門店「穂の香」では全体をまんべんなくまぜるとしている。


「釜がえり」という現象について

釜がえりとは、炊きあがった米飯をそのまま釜に入れておくと、ふっくらとしたところがなくなり、美味しさが損なわれることである。この「釜がえり」という呼び方は、関東では使う人が一定数いることがわかっている。

ほとんどの辞書にはないが、『新明解国語辞典』には載っている。「炊き上がった飯をそのまま釜に入れておいたため、ふっくらとした所が無くなってしまうこと」だという。

参照:http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000086998

「釜がえり」という言葉の意味が知りたい。 | レファレンス協同データベース

 

ちなみに、「釜がえりを起こす」と言うらしい。まぜる派とまぜない派に言い換えると、釜がえりを「起こさない派と起こす派」だ。

釜がえり

釜がえり

かき混ぜずに時間が経って冷めたごはんは、密度が高く米粒同士がくっついて塊のようになっている。炊き上がった後にかき混ぜることで釜がえりが起きない。

かき混ぜたごはんと釜がえりの図解 

赤い部分が表面の澱粉で水色が空間。まぜたごはんは表面の水分が飛ぶので赤い部分が小さくなり、糊状になりにくくなる。そして、歯ごたえと空間ができる。かき混ぜる派の「空気を含ませるとおいしくなる」という説明は水分をとばして空間をつくることを表していると考えられる。

かき混ぜたごはん

かき混ぜたごはん



下の図は釜がえりを起こした状態。炊き上がったままの状態で空間が少ないので、冷めるとかたくなりやすい。また、表面の澱粉が糊状になりベチャベチャしたごはんになる。

釜がえりを起こしたごはん

釜がえりを起こしたごはん



混ぜたごはんと混ぜていないごはんを食べ比べてみた

かき混ぜ方は、しゃもじを縦にしてごはんを切るように、そして底からひっくりかえすようにかき混ぜる方法でまぜる。 ちなみにしゃもじは漢字で「杓文字」と書くらしい。20年近く前の炊飯器があったので新旧炊飯器の比較もする。


2018年製炊飯器(3号)で炊いたご飯

かき混ぜたごはん

かき混ぜたごはんの食感は概ね均一になっていると思われる。そもそも均一になるように混ぜたので当然である。鼻の奥のほうでほんの僅かに草のような香りがするが、これは稲の香りなんだろうか。


冷めたものは一粒一粒がかたくなり、全体もかたまりになっている。決して不味くはない。かき混ぜるのに多少は力が要る。


かき混ぜていないごはん

混ぜていないごはんは、上の部分と下の部分の違いがはっきりしている。上の部分は一粒一粒の弾力が伝わってきて舌ざわりも歯ごたえも良い。一方、底の部分の粒は水分を吸い過ぎてふやけた感じがする。また、糊状になったものが隙間を埋めている。

炊きあがったごはんの上部と下部



下の部分はネチャネチャした感じで、リゾットやおかゆが好きな人はここがおいしく感じるかもしれない。赤丸で囲んだところが下の部分。不味くはないが糊状の澱粉が多く、米粒もつぶれている。ここだけ食べるとおかゆっぽくて梅干しが食べたくなる。

炊きあがったごはんのつぶれた部分



冷めたものはかき混ぜにくい。温かいうちにかき混ぜていたごはんとは明らかに違う。表面が糊状になりかたまったものと思われる。しゃもじを縦にして削るようにしないと混ぜられない。

冷めて硬くなったごはん




2002年製の炊飯器(5.5号)で炊いたご飯

実家の炊飯器が2002年製だったので、古い炊飯器で炊いたごはんも比べてみようと思い、炊いて食べてみた。ただ、二つを隣に並べて食べ比べをするのではなく、記憶を頼りに味を思い出しながら食べたので、正確な比較とは言えない。


食べた結果、味は大体おなじだと思う。特別どちらが美味しいということもなく、不味いということもない。3号の炊飯器とおなじで、上はパラっと底は糊状になっている。

かき混ぜたごはんとかき混ぜないごはんを比べた結果

特にこだわりが無く、より美味しいごはんを理想とする場合は、炊きあがったらほぐすと良い。舌触りもよく一粒一粒に歯ごたえが生まれる。


ただし、炊きたて熱々のごはんをかき混ぜたものが絶対的に美味しいというわけではない。「塊になったごはんが好き」という人もいれば「猫舌なのでぬるめのごはんが好き」という人もいる。

混ぜたごはんと混ぜないごはんの、炊きたてと冷めたあとの違い表

※新しい炊飯器で炊いたご飯と古い炊飯器で炊いたご飯はほとんど同じなので比較は省略します。

  炊きたて  冷めたあと
 炊飯器(2018年製/2001年製):まぜたごはん ほぼ均一、混ぜた分あまり偏りがない

全体がかたくなっているが比較的ほぐせる

 炊飯器(2018年製/2001年製):まぜないごはん 上のほうと下のほうで密度、糊状の澱粉の量が違う  全体がかたまりになり比較的ほぐしにくい



おいしいごはんのポイントは品種と産地と鮮度、そして「ほぐし」

かき混ぜた際に起きる変化を鑑みて、炊けたごはんをかき混ぜる行為を「ほぐす」と呼ぶのは実に的確な表現である。かき混ぜる行為を包括し、本来の目的の意味も含んでいる。より美味しいご飯を目指すならほぐしは重要なポイントだ。

「ほぐし」の方言はいろいろある

全国的に使われている「ほぐし」に対し、地方によってはごはんを混ぜることだけを表す方言がある。北海道では「かまかす」「へら返し」、東北以北では「かます」、地域不明の「かんます」など。

普段は耳にする機会がない北海道弁は難解だ。米の産地も、比布町(ぴっぷちょう)、留萌(るもい)など読めない地名がたくさんある。


ごはんにも美味しい部分が存在する

イカのまん中が甘くて他の部分より美味しいように、ごはんにも美味しい部分が存在する。「林先生が驚く初耳学」でも紹介されていたもの。写真の赤い部分が一番おいしく炊けているところだ。余計な圧力が加わらず、ごはんが理想的な踊り方をする。上のほうだけだがふっくらしていてとても美味しい。

米飯の一番おいしい部分




お米の品種と産地と鮮度が最重要

今回はより美味しく炊く方法をしらべたが、図らずも、お米の産地と品種と鮮度が違うと圧倒的においしいことがわかった。この違いを例えるなら、畑でとった新鮮な野菜が、甘くて美味しいと感じるのに近い。スーパーで買う野菜と違い、もっともっと食べたくなるようなおいしさがある。厳選されたお米がおいしすぎて感動した。


普段たべているごはんが不味いと思ったことはない。しかし、良いお米は高級チョコレートのような甘美な味わいがある。一口食べて美味しいと思ったらもうやめられない、箸が止まらなくなる。そのうち産地と品種も調べようと思う。